019 ナンバリング(前)



蓮実は、三蔵の隙を付き素早く一枚原稿を拾い上げ、
悪戯っ子そのものの、満面の笑顔になった。


「こんばんは、あたし、悟浄の同僚で、蓮実紗依っていいます」

言いながら、「修羅場なんですね。」と悟りきったように原稿を差し出す。

赤面する三蔵に、
「あたしも悟浄と似た者同士っすから、恥ずかしがらないで下さい。」

(こいつも同人女か?)


でも、ジャンルは違うな、と思った。

それにガタイが良かった。

三蔵のを初めて見る女は大抵、えっレイヤーさんじゃなかったの?本描いてるんだぁ、
えっ二次元ラーヴのロリ男なの?黙ってりゃいい男なのに、もしかして童貞ですか?とか、
作品の萌えポイントはどこ?大人の女のほうが絶対良いわよ〜などと取り乱す。

「俺は玄奘三蔵。丸腰デパートで家庭用品売り場を…」

無意識に、財布のポケットを探りかけたら折り込んだペーパーが出てきた。


「あ、名刺かと思ったらペーパーですか(笑)。せっかくだから頂いておきます。
ところで、悟浄とあたし、悟浄のお姉さんのお店行くところなんです。
よかったら、一緒に行きません?」


悟浄が、慌てたように割り込んで来た。

「姉貴、隣町で小さな花屋とバーやってんだ。
こいつ、見かけによらずお花やっててお得意なのよ。
三蔵、そのうち連れてこうと俺も思ってたんだけど…修羅場か」

「原稿進まねぇでうんざりしてたんだ、お前を当てにしてた(泣)...」
三蔵は悟浄の肩を掴み激しく揺らした。

「なんで肝心な時に助けてくれねぇーんだ!やっぱ他人より身内なんだ(泣)」

「だってお前そんな話今聞いたばかりだぜ。」

「......げふん。」

「じゃ、決まり!ねえ、3人で姉貴んとこでヲタクろうよ」

「お前トーンとか貼れるのか?俺は人並みに貼れるけどな!」

「ま、ね。得意分野は背景とアクションシーンなんですよ、集中線も任せて下さい!」

蓮実はてきぱきとタクシーを止め、三蔵を先に乗せると、悟浄が素早く隣に乗り込んだ。

「何でよ、何であたしだけ…」無理やり蓮実もその横に乗り込んだ。

「狭い!」

「折角三蔵と密着して乗れるんだから邪魔すんなよ。
男同士肌のふれあいも大切なんだ。」

悟浄はぶつぶつ言いながら行き先を運転手に説明し始めた。

ふと、三蔵は耳元に熱を感じて、「アン」と言ってしまった。

「強引に誘っちゃって、悪かったな…」

「誘われると断れない体質なんだ・・・俺」

すり寄って、囁いた三蔵の声は、心地よく思わず悟浄はときめいた。

そんな悟浄を押さえ込み蓮実が話しかける。

「初めて会う人に、あれなの、わかってるんですけど、
でもチャンスっていうのは前髪掴まないと後ろは禿げてるっていうし、その」
「何が言いたい…悪いけど、こう見えて俺はヅラじゃないんだ。地毛なんだ。」

三蔵も低い声で答えた。


わけがわからないながら、蓮実が必死なのは伝わってきた。
どうやら、間に居る悟浄に聞かれても構わないことも。

悟浄も知っているらしく、言葉を切って、三蔵に何か言おうとした。

「お客さん、すいません、△△町のGSを、右で、それで?」

だが、運転手に遮られて、渋々また説明を繰り返しだした。

「三蔵さんは、描く専門な人ですか?読み専ですか?」
「もちろん受け、いっいや、今は描く方に比重が」

「良かった。じゃ、あたしが新作見たいって言い出したら、バーで待ってるって言ってくれませんか?
そしたら、痔炎姉さん、あ、悟浄のお姉さんそういうんですけど、倉庫に色々隠し持ってるんです。
きっと自分が倉庫行くから、悟浄に三蔵さんのお相手してろって言うと思うんです。
三蔵さんも読みたいって言ったら痔炎さん黙っちゃいない、その…」

三蔵の眼の端に、頬に血を昇らせて、俯いている蓮実が映った。

つまり、彼女は悟浄の姉と二人になりたい、ということか。

「ラジャー了解」

うっかりハチベエな自分が果たして彼女の助けになれるか、自信はなかったが、
ひたむきな蓮実の表情には、同人魂を動かすものがあった。
「すいません、どうしても今夜試したいんです」

意気込んで、肩をいからせた彼女の手を、励ますように、軽く叩く。

その上から付け足したように悟浄も手をおいた。

「なあ、二人の世界作られると、俺、マムシになっちまうんだけど…」

「マムシ?」

「あっ違ったハブだった(笑)あ、次の信号で曲がって下さい」

「もうすぐね。」

「何があっても驚くなよ、三蔵!」

悟浄の気合に、驚いた。

その横で蓮実もなにやら闘志を燃やし指をボキボキ鳴らしている。

「悟浄、ひっさびさに燃えて来たー!」

「俺もなんだか萌えて来たー!ねっ三蔵♪」

「Midnight修羅場ーズ!」 二人の不気味なハイテンションさに少し身震いがした。

「あ、三ちゃん何、その態度はよ!」

「ちょっと怖い。」

「俺がいるから平気さ。」

「何があっても守ってくれるのか?悟浄...」
「ああ、三蔵のためならトレカの一枚や二枚...放出してもいいぜ。」

トレカ二枚...その程度なのか..俺って


せめてチャッカゴジョコくらい言ってくれ...

三蔵が心で嘆いていると運転手が聞いてきた。
「あそこでいいんですか?」
「オフコース!」

悟浄と蓮実が声を揃えて答える。

町外れのその店は、もう半分は灯りが落ちていて、片側の、時代劇に出てきそうな小屋に、
『金鳥』という古びた看板が取り付けてある。

ガラガラと、引き戸を開けると、そこは所狭しと埋め尽くされたフィギュアが、
天井に配置されたスポットに照らされて、「ここはハワイの土産屋か?」と
突っ込みたくなるほどのバニラとココナッツ の匂いが充満する
表からは想像もつかぬポップでキッチュな店だった。

「姉貴、いんの?」

「いるに決まってるじゃない♪お久しぶりだわーごじょたん。」

カウンターの奥から身を起こした顔も、よく見えない。

ただ、背が高くマッチョな輪郭だけが、ぼんやりとわかった。






menu 018 019後
蓮実同人説(たぶん格闘技系801←あるんでしょうかね?こんなジャンル)

あたしは同人経験が無いんで想像で書いておりますのでお許し下さい。

痔炎姉さんの隠されたおそるべし経歴は今後大注目なのらー。

次回気になるバーの店名暴露!

ここでいきなりですがメールフォームにてあなたが付けた店名募集(笑)

もしこれだ!と思う店名が閃いたら書いて送って下さい

HNはステハンでも結構です。
企画がボツらなかったら裏Hbtにて発表します。ご協力をv

果たしてあたしの決めた店名とビンゴする方はいるのでしょうか♪
SEO [PR] 爆速!無料ブログ 無料ホームページ開設 無料ライブ放送