007 こわれた弓

椅子にかけた途端、ポケットから手帳が滑り落ちた。

「何やってんの」
三蔵が身を屈めるより早く、悟空が手帳を拾って渡した。

「三蔵さあ、今週になってからスケジュールばっか眺めてる。
なんか大事な用事でもあんの?
有休とって行ってくればいいじゃん。」
「…それが出来れば苦労はしねぇ」

隠れオタクというのは、普通のオタクのように
一目でばれるいうことはあまりない。
イベントに頻繁に出向かないぶん、ネット(自サイト他)には常時いる。
内輪の心許した人間も、たいていは直接メールやBBSに書き込みにくるし、
客にしてもオンライン上の付き合いだ。
皆持っているHNは気が向けばいつでも変えられる。
拘り派の三蔵以外は。

先月、二人で組んだ仕事の帰り、漫画&ネットカフェに寄った。
皆一斉にネットサーフするブースで、三蔵も、
慣れた手つきの軽やかなタッチでアドレスを入力し始め、
思わず悟空は声を上げてしまった。

「三蔵、サイト持ってたんだ!」
「あ”〜〜〜〜!いつもの癖で!!誰にも内緒にしとけっ!いいな!」
最低限の言葉で事情を話し、「決して二次創作ホモサイトではない」
と伝えてブラウザを閉じると、即座にゴジョコ公式サイトに繋いで、
悟空を慌ててはぐらかした。

「悟空、今見たことは綺麗さっぱり水に流せ。」
「うん」

履歴を消したのを確かめると、オンラインゲームに暫し没頭した。
二人で戦ったパーティは見るからにヘッポコであった。

「あのさ、三蔵、ケアルかけてもらっていい?」
「.....その前にレイズしろや...」
すでに三蔵はヤラれていた(笑)




ブラウザを開いては、パチリと閉じる。
謎のリロード30連発でうっかり103589キリ番踏んじまった。
冷やかしだったので書き込む感想が無い。いつものことだROMってやれ〜。
そういえば込み入ったネットマナーの薀蓄を知らない。
これは隠れオタクの端くれとして、いくらなんでもヤバイだろう。
今日のところは逃げておいて、今度詳しい悟浄に聞いておこう。

でも…悟浄がオフ会をしているのを見たことがない。
参加イベントがいつなのかも知らない。
もしかしたら悟浄は話を合わせてくれているだけで
只の格闘技オタクだったのかもしれない。
「畑違いか.....」

いきなり、「俺サイト開いちゃったぜ」と教えた癖に、
サイト名やジャンルを言わない。
三蔵にも訊かない。

どういうジャンルかわかんねえから、
俺もどんな検索かけりゃいいのかわからねえんだ。
「でも戦隊物と相撲と格闘技と食玩とゴジョコは好きなんだ!」
その5項目で検索をかける。


該当なし.........

「…お先真っ暗」




早く上がって出て行く三蔵の後姿を、他の社員は怪訝そうに見送った。
「同人してるらしいね、マネージャー」
「同人って?」
「俳句かなんかじゃないの。爺さん趣味で575。悟空、なんか知ってんの?」
「知らねえ。でも、575じゃなくって53が好きだって言ってたような。」
ふと思い出した悟空は、自分の指をぱちんと鳴らした。
「ポール牧です!」
「古っ。」



大黒屋も、月に一度の定例秘密集会だった。
赤提灯は、入れたくても目に入らない。

…何とはなしに隠れオタクの殻が破れ、
妖しい八戒の笑顔に、自分の引き篭り根性が炸裂した。

「今日は、三蔵さんが好きそうなレアものがありますよ〜♪」

細かく彩色された衣装は、豊満な胸元で弾け、
ほのかな大人の味と混ざり合う少女の色気がたまらない。

「ゴジョコの潰瘍堂八頭身ヴァージョンです。」
「凄い…」
三蔵の喉からは千手観音の如くウニョウニョと触手が伸びていた。

ほんのりとセーラー服の甘みが効いた真板ケイとありさも、
(瓢箪屋オリジナルR18●●ゲーキャラ)
青春印菊●汁も(略して春菊)
(…こんなに凄いもんあるのに、何やってんだ、あいつ!)

「このゴジョコは限定だったんですよ。これも、あと一体なんです。
悟浄さんが来れば見せびらかしてやりたいんですがねえククク」

「来させるよ」

三蔵は携帯を取り出し、発信しかけては止めていたリダイヤルを押した。
35コールで、悟浄が出た。

「…わりぃ今トイレから出たとこ。」
「俺だ、俺。実はこの前事故起こしちゃって
今すぐ口座に30万円振り込んでくれないと大変なことに!!!」
「..........」
「スマソ。イッツアフリカンジョークだ。」
「そりゃ爺さんも婆さんもぞうさんもびっくり♪」


周りはやけにがやがやしている。

「…三蔵?何様?」
「…今、どこだ?」
「さてどこでしょう?」
「多分、某アニオタ店。」

背中で、がらりと開いたガラス扉が、ぴしゃんと閉まった。

「あ、えっと」
「大黒屋の定例秘密集会で、また買い損ねると惜しがるようなモンが出てる。
俺はもう買っちまったから、今度は分けてやれねえぞ。
とっとと来い」

「…はい、来ましたよっと」
肩に手が、そして衣装はオスカル。

おかしくてたまらないような、アンドレ清一色と目が合って、
悟浄が身体を二つに折って笑いだした。
「清さん、奇遇だね(笑)。」

「…コスかよ」
不機嫌な声を出してみても、ふつふつと、胸の中から、
羨ましくて、現実離れしていて、まるで地下組織にいるような感覚がとまらない。
ツーツー鳴っている携帯すら、
三蔵には、何かの暗号のように感じられた。

 

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お約束通り書いたのね〜裏Hbt。
回を追う事にヲタ度UP!
三蔵って一体何のサイトやってるんでしょう。
二次創作ホモサイトではないとしたら

わかった!水族館オタクのエイのHPだ(笑)
なーんて、あたしがエイ好きなんですわ。
飽きないですわ。
でもでも知人に教えられない恥かしいサイトであるのは確かだね(笑)
つーかここも色んな意味で恥かしいから知人にはヒミツよ〜ん。

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