009:かみなり


「不気味な部屋だな…」

「いきなりそれかよ。−ポジション決まってっから勝手にどけるなよ。」


あんまりな光景に三蔵は目を泳がせた。

縄がある。

この部屋にはゴージャスすぎて不似合いな燭台に蝋燭もある。

床は一面にばら撒かれた薔薇の花弁で見えない。


雑誌、ビデオ、被りものらしきものがベッドと、

手錠の載った低い座卓の間を埋め尽くし、

キッチンのリノリウムの床まで侵食しだしている。

三蔵はとりあえず前にあるものを許可を得ては横によけては道を作り、

座卓の前に腰を降ろした。


「あ、手錠、ベッドに上げといて」

「お前、薔薇の花敷き詰めて一体何やってたんだ?」

「あっ、三蔵やっぱ気になる?(笑)」

立つとまた、片付けた周りからものがなだれ落ちそうだ。

中腰で手錠を持ち上げ、ベッドに置いた。

ふっと、シアームスクが寝具から立ち昇る。









「人の愛する手錠ちゃん10cm上から落すなよ、いくらベッドだからって」

「このニッケルプレートスチール手錠は滅多に壊れんだろうが。
 そっちに放ってあるのはマレーシア製でどっからみても子供のオモチャ。
 こんなんで壊れる位なら拘束出来やしねぇから、交換して来い」

「マジ?詳しいのな」

「仕事で知らなきゃいけねえんだ」

「一体お前何の仕事してんだよ!まっ隠してるのもお互い様だからいいけど。

 ぼちぼちってことで、まず、作ろ」


箱を慎重に開けるとパーツを広げ始めた。


「んじゃ、パーツにゆがみとか割れがないかチェックして。」

手に取って、三蔵の眼が大きくなった。

「どうした?」

「騙したな、どっから見てもガンプラじゃねーぞ、これ。」

「ガンプラだってば。しかも限定品のプラキッズはなんとゴジョコちゃんだぜ。」

プラキッズ?何言ってんだ悟浄のヤツ。

三蔵が恐る恐るパッケージを見ると、そこにはこう書かれてあった。

「ガンガンファンタジープラレール プラキッズゴジョコ駅セット」

ああ、忘れていたが確かにこれもガンプラだ(泣)

いつまでも泣いてはいられないので
仕方なく三蔵はキッチンの空いている床に線路を組み立てた。


悟浄は嬉しそうに、途中でこっそり買ってきた
トンネルや踏み切りの入った袋を開けた。


「あ、三蔵ってお気に入りの電車ある?」

「リゾートしがらみ3両編成」

「よかった。俺は新幹線派なのよ」

「この”E3系秋田新幹線こまねち”は良さそうだな。」

「ヒーリングには持ってこいだぜ。凝りだすとやめらんねえんだけど、

 部屋狭いし限度があるぜ(泣)」


三蔵の取り出した”こまねち”を受け取ろうとして悟浄の手が止まった。


「…三蔵、屁した?」

「いや?」

「あ、…ごめん、下だ」

三蔵の耳にも、何かを投げつけたようなボスっと鈍い音が捉えられた。

 

 








「痴話喧嘩…だな」

「旦那に奥さんの雷が落ちたか?春の盛りの時期だから」


階下の雷は、閃きも見せずに、それきり沈黙した。

「意外とあっさり退いたな。恐妻家らしいぜ。」

「つまんねぇの。」


悟浄は掴み取ったビニール袋を丸ごとゴミ箱に押し込み、
なにかもごもご言い出した。

「わかんねえよ、何言ってんだ」

「これ、不燃物だから、分別してくれな」

「混ぜねえけど、こんだけ散らかってて言う台詞か?」

「でも、あるのは参考資料だけだぜ。
 ゴミとか食い物のカスは毎日片付けてんもん。
 匂いがやだし、俺、参考資料は汚いって思わないし」


言われて初めて、三蔵は部屋に入ったとき
悟浄のコロンの残り香しかなかったのを思い出した。

今は、プラレールだの、ゴジョコだのヲタクの匂いがしているが。


「ちょいこまねち見つめ過ぎて酔いそうになってきた。
 三蔵そっちの窓開けてよ。ベッド乗っかっちまっていいから」

言いながら、悟浄は廊下に面したキッチンの窓を開けに起ったが
すでに酔っていたのかフラフラしてこけた。

振り向くと、サッシをうまく持ち上げられずに
ガタガタさせている三蔵の肩越しに、
大きく柔らかい月が見える。

「ムーンプリズムパワーメイクアップ♪」


悟浄はぱちりと電気を消し、どこから取り出したのか
鳴り物入りムーンスティックを高々と掲げていた。


「おい、随分と幅広い趣味だな。」

「ほら、いい月じゃん。ちょっとそれ、コツが要ったわ、オラ」

三蔵の後ろから手を出して、ガタっと窓を持ち上げた。

涎が出るような近所の焼き鳥屋の匂いが入り込む。

「こいつの匂いで飯二膳...三蔵おかずに三膳目。」



窓枠に突いた手の間に居る三蔵は、聞かなかったことにして
黙って月を見上げている。



「月に代わってお仕置きよ....か」

悟浄の間抜けな台詞に我に帰り
急にこの変態部屋に恐怖を覚えるプチ変態三蔵であった。



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回を追うごとにますます原型が崩れております。
チキさん許して下さいね。

悟浄は薔薇の花びら敷き詰めて一体何を

第一希望 セルフポートレート マグナム悟浄(笑)
第二希望 清と涙のベルバラごっこ
第三希望 これからさんちゃんと薔薇遊戯

「三蔵の恥ずかしい写真撮っちゃったから。」

「ネガよこせ。」

「よこせじゃないでしょ。渡して下さいお願いしますって言ってよ。」 

「ふざけるな!」

「じゃこればら撒いてもいいんだ。」

「好きにしろ!俺様に恥ずかしい部分など皆無だ(笑)
 なぜなら俺は無一物!!!」

あーなんか、あたしが変態だ......

 

 

ところで三蔵様が本当に「屁」たれていたら
悟浄はどうしたのだろうか?

1.マイアイドル三蔵様に限って屁などたれないので自分のせいにする。

2.三蔵様の屁は不思議なことにキンモクセイの香りだったので
 暫くトイレに篭ってもらった。(脱臭効果あり)

3.三蔵様がへたれなら元祖へたれ屋としてギャランティを貰わねば
 取りあえずその場で押し倒してチューくらい奪ってみる。

 



どうやらこの悟浄の家の近くには焼き鳥屋があるそうだ。
ひな皮牛蒡が食べたいです!
そうです、あたしは焼き鳥が大好きさ。
焼き鳥食べながら焼酎←最近居酒屋縁遠い......
ビールはトイレ近くなるんでパス。
酎ハイがいいのです(笑)


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