013:深夜番組 2
丁度襲い掛かってきた仕事のパートナー津波女史38才独身(勤続20年)は、
1ミリたりとも無駄な隙間を作らせなかった。
「三蔵君のディスプレイは、まだまだ無駄が多いし甘いのよねぇ。
こうもっとマダームの購買意欲をムラムラと掻き立てるようなセンスが
欲しいのよ。勉強会さぼってないで真面目に出なさい。」
「でも言っとくが、坪効率では負けていても、ウクレレは俺のがうまい。」
負けず嫌いな三蔵である。
そうだ津波の野郎に駄目だしされてむかついたので
陰で残り僅かな携帯マヨを一気飲みしてしまったのを忘れていた。
冷蔵庫の中から取り出した冷えた携帯の着信履歴をスクロールしてみた。
「どっからもかかってねぇ...」
冷えきっていたのは携帯のみならず、三蔵の交友関係にも及んでいた。
買ってからしたことがない留守電設定やメールのサインアップをしようにも、
掛けてくる相手がなかった。
掛けるあてさえも。ガーンガーンガーン。
「俺ってもしかして孤独ちゃん♪」
髪の毛がまた、薄くなっていくのかどうかも、
考える時間もゆとりもないまま、生え際も驚くような速度で、剃り込みが進んでいく。
「リアル坊主.....笑えねぇ」
サボらずリアップしようと心に誓った。
鎧われていた心が、殻を失くしたとき、どこまでも胡散臭く、
そして嵌ると抜け出せないデンジャラスな悟浄へと雪崩れていくのが、怖かった。
「悟浄、聞いてもいいか?」
「なんだよ急に。」
「最近悩んでいる事がある...お前なら俺の気持ち少しは解ってくれると...」
「ああ、お前の事なら痛いくらい解っているつもりだぜ、三蔵。」
そう言って悟浄は三蔵をキツク抱き寄せ、髪の毛を優しく撫でた。
...ヤヴァイ今、毛三本抜けちゃった(悟浄心の声)...
悟浄の体温が伝わり冷えきった三蔵の身体を融かす。
安心した三蔵は上目使いで甘えるように聞いてきた。
「なぁ、悟浄」
その唇の動きは艶かしく悟浄を誘っているようだ。
「うん?何?」
「弟の...」
「弟の?」
「弟の...鎧の中はからっぽなのか?」
「悩みって...ハガレンっすか?」
昨日こんな夢を見た。
起きてからも悟浄の体温がやけにリアルに残っていた.....
枕元にはなぜか受け専シャインリップが置いてあった。
乾燥した唇に一塗りし鏡を覗き込む。
『怖がらないでぇ胸を大きくしてから言ってごらんなさいっ、
”あたしはオ・カ・マ♪”それが一番、初めの道なんですよぉん(^o^)/
レッツカミングアウトー★』
「あの人」の遺言にはそれだけ書いてあった。
(光明の電波:勝手に殺さないで下さい!それを言うなら書置きです!)
「俺にはオカマ願望はねぇーーーーーーー!!!!」
子供の自分が頼っていた「あの人」は大人でオカマ、
一人で素で父親、母親、姉貴の役割を全て担ってくれる存在だったのだから。
「あの人」以外の人間にされたら、許せないと思っていたのに、
悟浄の洗ってくれたブリーフが心地良かったというだけで、
「悟浄」を家政婦の代りに、してはいけない。
どこまで、近づいて、何を、分かち合えばいいのか。
…どのジャンルに絞り込めばいいのかもわからない。
しかし、ゴジョコオンリーと5358無節操は近過ぎる。
おまけにその時期は職場の
「イケメン社員が贈るホカイドー物産展」にも借り出されているのだ。
イケメン第一位の俺には「よいとまけ」を売る義務がある。
三蔵は重い手足を引きずり上げ、財布と鍵を掴んで外に出た。
パチンコ屋の看板のパの字が消えていて、別の目的を頭に留めてくれる。
「早く直せ。」呟いて見たが、つい看板を読んでしまう自分も情けない。
目的地はコンビニだった、すぐそこだ。
夜間は点滅信号になる道路はもう、人も車も途絶えていた。
ぼんやりと踏み出した三蔵の前に、いきなり曲がってきた木更津カスタムの
大型のバイクが、クラクション(ゴッドファザーのテーマ)を一発鳴らし停まった。
「…男の勲章!」
「茜さんのお弁当!」
合言葉が決まった。
排ガスのにおいにも消えない、柳屋ポマードがふっと、鼻を掠める。
かなぐり捨てたメットからこぼれる、紅い髪...のはずだったが。
「ヅラか…」
「え?」
「頭、でけぇ」
「あ、−悪ィ!なりきりバリバリ大輔祭りの帰りなんだわ。夜露死苦!」
慌ててエンジンを切り、バイクを歩道に引きずり上げて、
御丁寧にヤンキー座りで悟浄は三蔵にメンチを切った。
(また新ジャンルか?)
近づいてきている筈の姿が、何故か遠くなっていくようだ。
額から冷や汗が流れ出す。鳩尾のあたりにキリキリとさし込むような痛み。
「三蔵!?おい、三蔵!」
コンビニの灯りが、散り散りに砕けて、三蔵の視界は暗転した。
「…ココ、何処だ?」
「エリザベス内科胃腸科。食あたりだって...点滴打ったら帰って安静にしてりゃいいって。あと一時間位」
「すまん、トットイレ行きたい。」
「まーた何変なもの食ったのさ…点滴転がしてやるから、ほら立てるか?」
悟浄はふらつく三蔵を介助しトイレへと連れていった。
「悪いが、あとはいい。その財布に保険証入っているから」
「OK。あ、あるある、ナースステーションに行ってくるわ。」
「…と、もう1つ、頼んでいいか」
「何でも言いなさい、お兄さん頼れんぜ」
「一番外のポケットに、入ってる名刺みたいの…」
「これ?ミニスカパブ桃源郷 聖羅
おい、三ちゃんまたね★とか書いてるぞ。」
悟浄がつまみだしたのを見て、三蔵は首を振った。
「そっちじゃねぇ。」
「これか?」
「ああ、そこに書いてある番号、電話して、そいつ呼んでくれ」
暗い廊下に、悟浄のブーツの音がやけに響く。
突き当たりの公衆電話のある一隅は、わずかに明るかった。
自作したらしい名刺には、
孫悟空、という名前と携帯番号とメールアドレスが、江戸勘亭流で刷ってある。
馴れない公衆電話の発信音を聞きながら、
悟浄は最初の言葉を考えていた。
(知らない人間だから、やっぱ『俺、俺』で行くべきか…)
真夜中過ぎに、三蔵がためらいも無く呼べ、というのは、
一体どんな奴なのか。
またしてもオカマか?
それともヲタクか?
付いてる?
付いて無い?
イッテル?
イッテナイ?
何度呼び出したら、切っていいだろう。
いや、留守電位は入れないと。
公衆着信じゃ出ないかもな。
「…はぁーい?」
自分より、三蔵よりかなり超音波なアニメ声。
腐ってた?(笑)あたしも昔、夜中に激しい腹痛に襲われ救急病院に行って「最近海外行った?」とか質問されコレラを疑われました(笑)下りっぱなし♪
点滴を打っている間、隣に「死ぬ−。」とヘロヘロになった急性アルコール中毒の
若者が運ばれて来て救急隊員に説教されていました。酒は飲んでも飲まれるな(笑)
ハガレンはアニメを見ているのですが、先日shiroのみそさんとあった時に「鎧の中身」について
話したのでネタ頂き(笑)うちの旦那はいまだヒカルの碁に執着していてハガレン見て
「ヒカル今度はメカ佐為連れてんのか。」とアホーなことをいっとります。
余談:エリザベス内科胃腸科の先生はかなり美しいゴージャスな女医さんです。
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