014:ビデオショップ(後)

匂いは、糠床を掻き混ぜたように、
不本意に、強烈に、記憶を掘り起こす。
この女の顔は、忘れようにも忘れられないくらいクドイ。

流行はすぐ、くるくる変わってしまうのにそこだけ時間よ止まれ〜by E・○AZAWA な世界が渦巻いている。

かのバイブルの如く女はお水の花道でめきめき頭角を現し成り上がること 光陰矢のごとし。
今のように定職を持たなかった時期にはホールで使ってもらった恩人でもある。
相も変わらず、髪はお前サラサラサーファーガール、
眉毛は麻呂に毛が生えた程度、デッドストックで買ったとしか思えないヘップサンダル。

ヴェルサーチばかり着ていたかと思えば家では基本ジャージ、
偽者だとすぐにばれるのは承知で堂々とMIKE、
今日もなぜかジャージの上着に下は「し●むらー」な豹プリントだ。

かなり拘りがある「しま●らー」であることは間違いない。
たとえ香りが変っていたとしても、10メートル先からでも気がつかない筈がない。

…それに、中指を、たてて挑発する癖さえも、変っていない。

鬼のような直管マフラーは爆音で、
インタークーラー搭載でレスポンス向上、高速ぶっちぎり、
危険と隣り合わせのハラハラした感触が、蘇った。


「まだアレ乗ってんの?」
「あたしゃヤン車一筋だからね。バリバリ現役よ。」
そういえばここ入って来る時、路上にガツンと止めてあったなフルスモークなグロ。

昔を思い出した。

独りで借りて落ち着いて見たい夜と、
大勢で盛り上がって見る鑑賞大会な夜は、
不定期に交代する(あっ勿論AVっすよ。)

大盛り上がり大会な夜に逢った女の子たちは、皆、
抱きしめたら後の祭り
元気で、強かった、正直辛かった。でも若かったな俺。

…最後に、そういう夜を過ごしたのはいつだっけ?
「あたしとじゃん(笑)」
誰とだったっけ。
「だから、あたしだって。」
…俺、独りの部屋から、出なくなってきてるって?
「個室好きだもんねー。(笑)暇なら相手してあげよっか?」


無意識にさすっていた手が、
さりげなくヤヴァイ所に伸びていて慌てて引っ込めた。

「ところで悟浄、あんたタクティクスじゃないね?」
「今時それはねーだろ。」
「馬鹿もん!男はいつの時代も名香タクティス!」
「なんか昔思い出して泣けてくるって…勘弁してよ」


過去は忘れたい、のも、嘘ではないけれど。
タクティクスは一度瓶ごと棚から落ちてきてかぶってしまって以来
イヤになったのだ。
風呂に入ってもぬけなくて臭いと指差されたあの好奇心旺盛な15の春。

その香りを思い出すたびに情けない自分が蘇って、それプラス青春の甘酸っぱさが
程よくブレンドされるメランコリー。
メランコ・リーではないぜ。武闘家みてぇだな。アチョー。

白い瓶からふりかけられる禁断の香りが、
かすかな、三蔵の居た痕跡を消してしまいそうで。
成り上がり女の魔の手がこわかった。


もうとっくに飛んでいる幻のような三蔵様の匂いだけれど、
犬並みに優れた悟浄の嗅覚にはしっかりと刻まれた。

数時間前に、腕に受け止めたときも、
それはそれはどひゃーと感じたのを思い出す。


情けない笑みでホールドアップした悟浄と、
成り上がり女の間に、ぬっと、たくましい腕が出る。
やたら金ピカ光るごっついブレスレットが目を射た。



「…ナニ、お得意さん?」
「つーか元従業員って言う方が、ね、悟浄」
「はい、姉さん、いつぞやはお世話になりました。」
「じゃーねえ、たまにお店に来てねー。働きに♪」
肩を抱く腕越しにひらひらする手。 (…今んとこ首になっても、転職先は心配ねーな)





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でたな妖怪成り上がり女(笑)タクティクスの件は事実です。
仲良かった他のクラスの男が数メートル先からも匂うの。
ある日いつにも増して臭いから「どうしたの?」って聞いたら
「棚から落ちて浴びた。」あー青春の香りよーん。

「しま●らー」の存在を知ったのは10年以上前だったが
こっちに上陸した時、やっと友人(栃木在住)の言っていた意味が解った(笑)

「1000円で買った超●サしま●らの服」


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