024 ガムテープ

「2番目か...。 つまり食べ物で言うとらっきょう」

三蔵は思わず呟きハッとしたが、
回りには全然聞こえていないようで安心した。

捲簾が言っていたことはこれだったのかと
思い出すとどうにも歯痒くて三蔵は苦笑いをしてしまった。

「何?三蔵たんでも思い出し笑いすんの?」

「いや何でも無い。それと二人きり以外で三蔵たんはよせ。」

三蔵は悟空を促すように、ぼそっと低い声で呟いた。

目の前では済まなそうに肩をすくめ赤くなるテン・ポーと、
素早くひっくり返した皿を片付け始める捲簾が対照的な動きをしていた。


どんなに鈍い三蔵でもこの状況を見ていれば、
紹介されたこのジャージのセールスドライバーが捲簾のNo.1の位置に居るのが解かる。

「すいません、お騒がせして。僕どうも落ち着きがなくってぼんくらで...
 せっかくのお料理が台無しですね。ほんとにごめんなさい。」

「二人前3000円....」


「三蔵、今そんなこと言わなくても」

そういって悟空は三蔵の口を押さえ込んだ。

「すっすまん、貧乏生活が長くてつい金に換算してしまう...。」

三蔵がこそっと捲簾達の方を向いて謝ると
「昔っからじゃないの(笑)三つ子の魂百までって」

納得したような捲簾が笑ってそう答えた。

その横でやっちまったと苦笑いするテン・ポー。

そうなのだ、光明の教えは日々辛抱。

「好きなことをエンジョイするなら飯の二度や三度は抜いたって  死にましぇーん。
しかーし目の前のコレクションは油断をすると  他人の手へと渡る世間はお休み前のコーラック♪」


捲簾は職業柄、美容や肉体改造には口うるさい男ではあった。

ターゲットは取引先のセールスマンであったり、商店街のシャチョーさんであったり。

しかしこんな形で新しい標的?を紹介されるとは悪い予感が的中だ。


無意識のうちにテン・ポーの顔をじろじろと見ていたのかもしれない。

時折目が合うと、頬を赤らめてお友達光線を浴びせるので慌てて逸らした。

「何話したらいいか、ちょっと初対面だと緊張しちゃいますね。」

「あらテンちゃんは、いつもの調子でやっちゃえばいいんじゃない。」

「いつものいきなりやっちゃうと退かれますよ(笑)でも折角だから手短に説明します。 難しく説明すると切りがないんですが。
簡単に言っちゃえば、僕のこの肉体は日頃のトレーニングの上に成り立っているんです。
筋肉の質を変えたり、疲労し辛くしたり、 見栄えを良くするためのトレーニングを仕事の中で最大限実行する。
僕が心がけているのが、八階までは絶対エレベーターは使用しない。 かつ迅速丁寧時間厳守!」


「へぇ凄いなぁ。俺なんか二階でもエレベーターでいっちゃうよ。
こんどから階段使おうかなぁ」

悟空が話に食い付いて来たのでテン・ポーは嬉しそうに微笑んだ。

「で、筋肉鍛えるのに夢中で部屋のことはどうでもいいってんだから。
 ゴミ屋敷になりそうで恐ろしくて、ほっとけないっしょ!」

「でもゴミを捨てなくったって、服を着替えなくったって死にはしませんが
 筋肉はちょっとさぼると、衰えてしまうのが常識ですからね。」

「すげぇマッスルファイターだ」

「凄くないです、単なる捲ちゃんと一緒の変人なんですよ(笑)
 でも三蔵さん達の趣味も期日とか時間に追われるでしょう?貫徹なんかも?」


「俺の趣味?」


一体どこまで話してやがるんだ捲簾は......

まさかパンピーにゴジョコちゃんのことは言ってないだろうな?

だとすると、やっぱウクレレ?アロハ?

「いや、ウクレレは余暇にたしなむ程度なんで期日も何も」


「文筆の他にもウクレレを弾かれるんですか?」

「文筆?ははっ、まぁ本当に趣味で拙い文とか絵画を....」


取り合えず誤魔化した。


「でもこの前倒れて、俺夜中に呼び出しくらって。
原因は創作活動だったのかなぁ?ただの下痢だったような...」

暫く三蔵の下った話に花が咲き、テン・ポーも打ち解けて来た様子だった。

トラブルメーカーの悟空と捲簾が比較的大人しかったので混乱はなかったものの、
あまり会話に参加しない紅ガイジが、厨房で涙目になっていたのが
三蔵は少々気になっていた。

「紅さん、見事な料理でした。マンジュウガニ以外は...」

「やはり口に合わなかったか..(泣).」

あっ、いつもの悪い癖が出た。


俺は一言多いんだ。

「あっでも俺はOKだよ、店長さん」

大食らいの悟空が上手にフォローしておいてくれた。

さすが俺の右手、いや右腕だ。


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「今日はありがとね。さんぞっ」

「ああ。」

「俺もまた釣れたら来るよ、捲ちゃん(笑)あっ紅さんまた来るからね!」

紅ガイジは俯いたまま頷いた。

テン・ポーは閉店まで捲簾を待つと言ったので三蔵と悟空で店を出た。

「悟空、飲みなおすか?」

「任せるよ、三蔵。ところでさ...」

「....」

「変人だと思った?」

「何がだ?」

「ってその、あの二人。」

間髪入れずに三蔵は答えた。

「オフコース!つーかお前はあいつらを変人だと思わなかったのか?」

「変人って言うよりは、テン・ポーさんて中国人みたいだし。
でも微妙に恋人同士だったな(笑)俺と三蔵もそう見えるかな?」

「何を言い出すんだ、お前は」

「三蔵...三蔵は、今、ストークしている人いるの?」

「ストーク!!!」

「いきなりでかい声出すなよもぉ。俺、会社の受け付けの子によく聞かれるんだって。
非常口付近でこそこそしてたとか。気配を消して文具玩具に現れるとか、
三蔵に怒られそうで今迄黙ってたけど。」


「いねぇーよ。お前こそ人に探り入れてる暇あったら釣り仲間でも探したらどうだ?
 警備保障のおっちゃんとかにやたら受けいいぞ(笑)まさに孫みてーだって。誘ってみろ!」

  「ちぇっ冗談でかわすなよ。俺が女だったらなぁ、三蔵の女王様になるのにな。」


「おっ、マジで♪」

口が滑った・・・・・

「真に受け体質か?冗談に決まってんだろ!このスキモノがぁ。
 つーか三蔵って本気でMになったことないだろ?」

「それ以上言うと口にガムテープ貼るぞ!」

「貼られたいのは三蔵じゃん(笑)」


悟空に言われた言葉を噛み締める。

本気でMになったことなどない。

Mが永遠に続けばいいが、いつか訪れるだろう苦痛への目覚めが怖いのだ。


キツク縛り、惜しみない愛を与えて頂戴と言っていたあの人のように。


「三蔵、ゴジョコなんか言ってるぞ。」


そう言われて初めてポケットの着信に気付いた三蔵であった。






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紅ガイジ悟空にぽーっとなる(笑)大食い×料理人まさに理想のカポー。
温かく見守るつもりなの♪←妙に気に入っている紅と悟空。
裏Hbtの三蔵たんは二番目にらっきょうが好きです。
一番の好物は悟浄(笑)でも恥ずかしくってまだ告れないの。きゅんきゅん。


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