025-2 のどあめ(後)

激しい欲望を抑えきれずに、尖らせた●間を摺り寄せ、
きつく、三蔵の手を握る悟浄の手は、ひどく熱かった。

「引き返さねーか?今なら間に合うぜ悟浄」

「だーめ…今、いかねぇと、ずっといけねえ気がする。
三蔵と、何にもなかったみたいに、喋って…
でもそれじゃ嘘になる。こんな気持ちぶつけないで抱えたまんまじゃ、
腐って俺は病に冒される、その方がいやだ、一緒にいってくれ三蔵」


...暗転(その間約10分)




漸く、悟浄の指が緩んだ。


「ごめん、痛かったっしょ?」


「そういう問題じゃ...(泣)」


今度は、柔らかく包まれた。



「三蔵が、俺に無理矢理されるのが嫌いなの、判ってんだ、ごめんな。
俺、Sで、嫌がられると萌えるんだ、
人の視線てすげぇ刺激になる、今、やっぱ、チャンスだっだし、どうしても…」


「ご馳走様(笑)でも強そうなこと言ってるけど
その程度のSじゃお兄さんダメダメじゃん」


運転手が爽やかな笑顔で一言いった。

そんな言葉には耳も傾けずに
「あっやっぱ家じゃなくってここ行って」と
悟浄は痔炎の店の名刺を渡した。




タクシーは空いた道を快調にぐんぐん飛ばす。

それとは反対に三蔵は不機嫌そうに俯いて何かに耐えていた。

「うぅっ、だめだっ、もう限界だ。トイレ探してくれ。
ウォシュレットじゃないとだめだから、ウォシュレットじゃないと」


「大丈夫か?三蔵、少し我慢しろよ」

三蔵が問いかけてまもなく痔炎の店に到着した。


「メリー☆痔炎」のネオンは点っているが、中は明りが無かった。 「姉貴、ここの裏住んでるから、自宅はウォシュレットだ」

三蔵は、一瞬力をこめた手をゆっくり離して、冷や汗を垂らしながらタクシーを降りた。


「お兄さんは車内に残るんだよね?」


運転手はカワイ子ぶって話しかけ、返事を待たずに窓を降ろし、エンジンを切った。

乾き過ぎた空気の中で、流れ込んで来た湿り気が淫靡だった。

「お兄さんも、ひとつどう?」


運転手は肩越しに、ブルーと銀の丸い缶を突き出した。


清一色がよく眠気覚ましに舐めているのと同じものだ。

メントールが、焼くように悟浄の喉を下りていった。


通り過ぎる車も、まばらになる中、
髭剃りが、ジジー、ジジー、と唸りを上げる音も聞える。



「お前かよ!ここで剃るなよ!」

運転手だった。

「だって夜勤で迎える朝に髭ボーボボはイヤなんだよ。綺麗でいたいもん
それにお兄さんだってキスしたときにジョリってなったら嫌でしょ?」

三蔵たちの声は、聞えてこない。


「…他の車、呼べる番号教えてくれりゃ、速攻帰ってもいいぞ、お前...」

「えー髭もそったし、これからお兄さんと遊ぼうと思ったのに♪
全然心配無いよ、夜明けまでのシフトですから〜残念!」


運転手は、穏やかな笑顔で振り返った。


街灯とネオンの淡い光の中で、美しいその顔には痣があった。

「夜行性なんだよね、僕。夜、家に居てもゲームばっかしてるから、全然寝ないの。
昼の会社遅刻ばっかりで、まともに行っても居眠りしたりで(笑)
そんなんで首になってこの仕事始めたんだけど、専ら夜勤専門だよ。」


ポンと、もう一つ、浅○飴を口に放り込んで、彼はシャツの襟を緩めた。

やはり細く美しい指は、よく見るとゲームダコが出来ていた。


自分も大差ないだろう、と悟浄は自分の手に眼を落とす。

手の甲に、「激安市場卵88円」と小さく書いてあった。

しまった先着200名様限りのセールを忘れていた。


しばしショックを受けていたが気を取り直して運転手に話しかけた。


「昼夜逆転してちゃ出会いもねーだろ?」

「そうでもないよ。人間としちゃ、引き篭もりの部類なんだろけど、
幸い、僕って見た目がいいから。女の子も寄ってくるし男の子も寄ってくる。
声かけられれば、連れてきて、昼近くまで起きたり寝たりして色々遊べるし、
夜はこうして働きながらの出会いが結構あるでしょ、
たまーにお兄さんたちみたいないい男も拾えるし(笑)」


ほろ苦い笑いは、サイドミラーに向けられていた。


「なかなか、一般人とは暮らせないけどね…
勤めてた会社辞めさせられたとき、付き合っていた社内恋愛の子は呆れて出て行ったよ。
だらしないのにも程があるって。去るものは追わぬ主義だし。
一人でいることなんて気にもならない(笑)気まぐれに寂しくなっても相手には困らないもん。
さっ、そんなことどうでもいいから、彼が帰ってくる前に僕を試してお・兄・さ・ん」


「試すって...いや...ん」


悟浄が運転手に襲われかかったとき
建物の裏手で、「すっ、凄ぇー」、と大きな声が響いた。


トイレを借りに寄ったつもりが、丁度痔炎が納戸の整理を始めるところで
廊下に大量の同人誌が放出されていたのだ。


「さすが姉貴、さすが壁サークル、俺の作品が子供のお遊びに見えてきた(泣)」


「あんた小学生の頃からかれこれ20年もやってりゃうまくもなるわよ。
それにうちのお母さんだってお父さんに隠れてこっそり同人やってたらしいの。
封印しきれなかったのが本棚の奥からごっそり出てきたことあるのよ。びびったわよ」


「マジかよ」

「血がそうさせるのかしらねぇ。カラオケ道場とうたっていても
見た目はどうみても漫画喫茶のようだったわ(笑)おかげであたしたちは退屈しなかったけど。
…悟浄は、いまいち不器用で書き手には向いてないからコレクターに走ったのよ。
そうそう蓮実ちゃん、あの娘はいい絵師よ、売れっ子になれる、相方はいくらでも見つかる、
あたしみたいに、オカマで浮気性なのとやっていたら勿体無いわ」


痔炎の声は、むしろ穏やかだった。

「こっちは姉さんのソロだな」

豪華な紫の表紙の痔炎メリー作の本を手に取った。

表紙は渋くタイトル文字だけが書かれていたのでパラパラとめくっていると。

「これって捲天じゃねえか…それに、53はこれっぱかしも入ってねえ」

「当たり前でしょ。半端にカップリングの壁は越えられないのよ」

「53はやらねーのか?」

「そうね、あたしにとっては潮時なの。卒業よ卒業。」

「卒業(泣)」



痔炎と三蔵がカップリング論争を続けるさなか、残された悟浄は......

「…車は、やっぱ狭いよね」

運転手が、ぽつりと呟いた。

「動きが単調になるなぁ」






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何やってんだ?悟浄と運ちゃん。
今回登場あたしの一押しキャラ運ちゃん。
名前は「宗方神」(笑)「神様」と呼んで下さい
これからも瓢箪町界隈を無駄に流して三蔵達に付きまとう予定。
えっ痔炎ネェさん蓮実とプロレスやるんじゃないの?
気まぐれな展開に頭を悩ますあたし(笑)
つーか悩んでませんが
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