26 The World





運転手の言葉が頭の中でグルグルと回っている。

〜動きが単調になるなぁ〜

目の前で起こっている出来事は自分にとって危険な誘惑なのに
気持いいからと言ってやっちゃっていいのだろうか.......
ああ、それは許されないめくるめく官能の世界。

「あのお兄さんと兄弟になっちゃうのかなぁ?
 お兄さんたち、ただならぬ関係っぽいよね。
 さっきはSとか言って耳の穴ばっか攻めてたけど(笑)それっていいの?
 僕、されたことないから良くわかんないよ。」


メントールでスースーする唾液を飲み込みながらゆっくりと悟浄も言葉を探した。
が出て来たのは、運転手と同じ言葉だった。
一瞬躊躇ったが、間が開きすぎるのも嫌だったので口にした。


「俺にも解からない......」


運転手は軽く頷き微笑んだ。

「あっ、お兄さんも攻めなんだ」


悟浄は何も考えていなかった。

アン、イヤンと言われれば攻めるだろうし
やらせろと言われれば受ける。

決定権は自分にはない気がしたのは確かであった。


「いや、いまいち攻めきれていないんだ。
あと一歩のところでうまくかわされる」

「だったら大人しく寝てればいいのに今みたく」

車の窓から外を見上げると高く暗い空の中に浮かんだ半月が、
流れの速い雲に出たり隠れたりを繰り返す。


その静寂を突き破るかのように、「また来るぜ!姉貴」と声が聞こえたかと思うと
車に向かって満面の笑みを浮かべたコミケ帰りのような荷物の三蔵が歩いて来た。



「おっ新技開発中か?」


「未遂ってとこ、このお兄さん意外と弱虫なんだ(笑)」

運転手がエンジンをかけ後ろのドアを開いた。


「今度はどこ?」


何も言わない悟浄のかわりに三蔵は自宅近くのコンビニの住所を告げた。

ライトを点けゆっくりと車が動き出す。

三蔵はちらっと後ろを振り返ったが、まだ痔炎が手を振っていた。


「ラッキー クッキー やしろ●きー...。」


嬉しそうにガッツポーズで叫ぶ三蔵の声が、狭い車内に響き
ちょっと傷心の悟浄は思わず頭にエルボーをくらわした。

「一人ではしゃぐんじゃねぇ、三蔵。」

「これがはしゃがずにいられるか。」

「そんないいことあったのかよ?」

「嗚呼、あったとも。ウォシュレット借りに入った瞬間廊下に溢れんばかりの
同人誌の山、山、山。すること済ませて落ち着いて手にとってみると
それはもう俺の作品が子供の落書きに見えるほどの完成度。
なにがいいって絵自体もストーリーもいいがなんたって線がいい。
線フェチの俺にとって たまらなく理想的な線なんだ。
それに姉貴がもう53は卒業とか抜かしやがるんで
頼み込んで53だけ集めてもらってきたと言う訳だ」


バックミラーに映った運転手の顔も三蔵はやっぱり受けなんだと考えていたらしく
無言で頷いていた。


それっきり車内は静まり、悟浄は外を見ながら窓に唇を当てていた、プレコのように。

そんな間抜けな悟浄でも、使える良い姉を持ってうらやましいと三蔵は思った。


運転手は土地勘がある癖に余計なところをぐるぐる回って
メーターを上げまくって目的地まで二人を運んだ。
「てめぇは可愛い振りしてなかなかやり手だな」

「いいよ、半額で。僕も仕事だし距離かせがないとやばいんだ。
それより夜でかける時には指名してね。はいこれ僕のタクシーカード♪」


そう言って走り去った。


気が付けば悟浄ごと一緒に去っていた。

が、三蔵はリポDを飲みたくてそれどころじゃなく一目散に
コンビニへと入っていった。

「何で俺を降ろしてくんないの?」


悟浄は無駄だとは思ったがあえて聞いてみた。

「いや、さっき邪魔入ったし...今日はもう仕事切り上げて帰ろうかなぁって」

「明日つーか今日俺仕事なんすけど。」

「泊まってっていいよお兄さん。」

「泊まったら俺に良い事でもある?」

「取り合えずダブりの食玩あげるよ。
それからムシムシキングの金レア、ヘルクレスオオカブチョもあるよ。」

「食玩!!!セブンイレヴン限定の2002年ライダーボトルキャップ
フル彩色のアマゾンはある?」


「10体くらいあるよ(笑)」


アマゾンとオオカブチョの誘惑に負けそうになったが
ここでついて行ってしまうと一生、三蔵とラブラブになれないと
悟り赤信号で止まったすきにタクシーから逃げ出したが
手にはしっかりタクシーカードを握っていた。


「ごめんねー、さんたーん。一人にさせてぇーーーー
アマゾンよりさんたんが好きだぁぁぁぁぁ」

そう叫びながらコンビニまで全速力で走った。


幸い三蔵は雑誌コーナーでジャンプにひっかかっていた。


「良かったまだ居て。誤解しないでくれ」


「誤解?何を?」


「運転手とは何にもなかった」


「はぁ?」


「いや、だからその俺は三蔵以外のヤツとは」


悟浄の弁解には耳をかさずに場所を移動し
籠に無造作にスープやパンを放り込むと三蔵は指差し言った。


「見てみぃ...悟浄、これが今話題のジャパン53号!亀甲縛りパンじゃ。」








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