27 電光掲示板





「いきなり襲うんじゃねーぞ」

「へーい予告してから襲います」

「そういう問題じゃねーだろ」

三蔵が向い側に腰を落とした途端、
悟浄は自分のペットボトルとパンを持ち、後ろに回り込んだ。


「ねぇ何ついてた?」

背中に、遠慮ない重みがかかり、
もう少しで押しつぶされるかと思った。

「うわっまじィ♪三蔵!やるなぁ、これ俺にとってはレアな
1番のマリオだよ。くれ」

悟浄のヤツ本気で欲しがってるな、マリオ。
ふふ、これと悟浄の持ってるゴジョコたんの
ニャンダーフェスティバル限定ボトルキャップとトレードだ(笑)。


「ただではやらん」
「あとそれ一個でコンプなんだよぉ」
ますますトレード率アップ!(笑)
これでゴジョコたんバスタブBCは俺の物だ!


「なんだよぉ三蔵のケチ」
悟浄はあっさりひいた。

「マリオいらないのか?」
「ん、自力で探すからいい」
三蔵の計画は一瞬で水の泡になった。


「ニャンダー・・・」


と言いかけて空しくなったので三蔵は黙り込んだ。

お互いにもくもくと亀甲縛りパンを咀嚼する動き、ペプシを流し込む動きが、
ダイレクトに伝わってくる。


先に沈黙を破ったのは三蔵だった。

「悟浄、なに紐んとこ先にとって食ってんだ。
一緒に食わなきゃ53号の意味ねーだろっ」

「だって、するする取れておもしれーんだもん。
思わず剥いちゃった(笑)」


初めDKの椅子に座れ、と勧めたのに悟浄は、
「そっち、行っちゃダメか?俺、椅子に座って飲むの好きじゃねぇんだ」
と上目遣いで言ったが早いが三蔵の膝に座った。


「お前何キロあると思ってるんだ」

「これくらいでつぶれるほどヤワじゃないでしょ、さんたーん♪」

悟浄はごろにゃんと言わんばかりに抱きついて
三蔵の首筋にすりすりしている。


「さんたん、いい匂いするにょ〜ん。さすがゴジョコの”兄貴の油ぎった地肌も
すっきりさっぱり乙女シャンプーキンモクセイの香り”はいい仕事するにょ〜ん。」

一瞬、悟浄のゴジョコたんのモノマネに心奪われそうになった三蔵だが
今夜、これ以上誰かの相手をして貫徹しようものなら、
ばらばらになってしまうだろう。
なにせ修羅場明けなのだ。


三蔵は黙って、顎をしゃくった。

「わかったからゴジョコの真似はやめてくれ&どけてくれ」


仕方なく悟浄は背後に回った。

べコンとペットボトルを押す音がして、さらに背を丸めた悟浄の背骨が、
ごつんと三蔵の背骨に当たる。


「あ〜また街であの運転手にあったらどうしよう」

「…凡愚めが、向こうはお前が思っているほどお前には感心ない」


「悟浄軍士気低下......」


搾り出すような、溜息が聞こえる。


「何悩んでるんだ?お前は」

「何悩んでるんだって言われても...取りあえず
一番の悩みは姉貴と蓮実のこと....
あいつら...一体何がやりてぇんだ?」


「プロレスだろ?」

「いや同人も捨てきれてないと思うんだ」

「まぁな、人生色々選択肢はある、飽きないように、萎えないように、
なんて生き方、大変だって、みんなわかっているんだ」


おおナイス俺発言!
解っているから、俺は明日への活力ゴジョコたんグッズを
財産はたいて買いあさっているんだにょーん。

二次元ガールは裏切らないにょーん。

スランプには逃避だにょーん。

〜さんたん、浮気しちゃだめだにょ〜ん。

さんたんにはゴジョコがいるにょ〜ん〜

にやけた瞬間咽喉がつまり、三蔵は食べかけの亀甲縛りパンを戻しそうになった。


向かい合っていなかったことが有難かった。

「姉貴あんなだから、後ろ指さされる生き方して欲しくねえのに」

膝に顔を埋めたらしく、くぐもった声だ。

「三蔵が俺の立場だったら…一番身内の人間がオカマだったら…どうする?」

身内に一番近いとしたら、捲簾だろう。

「一番身内に近い人間は...」


なんちゃってハードゲイだ...と心でつぶやいた。


「あの人」もそうだった。

身内は全部それ系なんだよ...またも心でつぶやいた。


だから余計に、
最期に一度だけ、姿を消す前に
三蔵もそのうち目覚めるときがくるでしょう
怖がらずに心を開いてみなさい、と言った言葉が胸に残った。


けれど、そのタイミングはどうしたらわかるのか。

あのときは訊くことすら頭に浮かばなかった。

「あの人」が居なくなって自分もオカマになるべきなのか、
それだけは考えられなかった。


失踪届けも、家の後始末も、
やはり「あの人」が育てたオカマの人達と捲簾が取り仕切るのを、
何か霞の向こうの出来事のようにしか覚えていない。


埃を被った店(コミカルパブ金山寺)から実力者がめりめりと引き抜かれた後に、
閑散とした店内は、
借金を増やす度に取立ての攻撃が外壁にダメージを与え、
その痛みだけが、鋭い現実だった。


いつのまにか薄れたような気がしても、
思い出す痛みはあまりに鮮やかだ。
千本ノックが股間に当った時にも似ている.....


もう一ヶ月一万円生活はごめんだったから、
借金など背負いたくなかった。


なかったはずなのに。


今背中に感じる悟浄の体温は貧乏神のようであった。

この男と出会ってから、忘れていたコレクター癖に火が着いた。

(過去収集物、筋ケシ、BIGリーマンチョコ、ライダースナック等)

食玩キングの悟浄は、めぐり合わせで居合わせた自分に
近寄って来ただけかもしれないが、にわかものの俺が
真似して集めたダブリもんでも
幾らかフルコンプへの道に役立っているかと思うと、
借金の記憶を押し流す、ダブリ回して新品購入の快感が湧いてくる。


けれどこういう気持ちは、誰かに強いられて持つことは出来ない。
その筋の好きな人にだけ、それだけは明らかだ。


「お前が心配する気持ちは、姉さんだって判ってるって、
お前が一番知ってるだろ?
だけど姉さん、の中に蓮実が入っていけるんだとしたら、
姉さんがどんなに抵抗したってそうなっちまう。
…そうならなかったら、誰かが説得して出来るってもんじゃない。
蓮実がどんな技を持っていようとも」


悟浄の背中が、大きく震えた。


「蓮実が姉貴にって…何言ってんだよ、三蔵の言うこと全部エロい、
三蔵の口からそんな言葉聞いたら俺....
俺だって...グフッグフッ」







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そしてこれは耳かき職人のあたしが製作した
伊豆専用ザク耳かき(笑)
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